まんが宇宙大作戦DVDの特典(その2) 【ST情報】

TAS-DVDの楽しみ方

Star Trek Log 8
▲TASのノベライズ本(初版は、このようにTASの特徴的な画面が表紙になっていた。)


前回(その1)は、TASの特殊性を述べた。TASが、「少数の関係者によって製作されたこと」、「動画よりも先に、音声が収録された“朗読劇”であること」などである。


今回(その2)は、TASの面白さ(素晴らしさ)を掘り下げていこう。
題して“TAS-DVDの楽しみ方”。
今回は趣向を変えて、私ならこうやってDVDを見る、というスタイルで書いてみたい。


【1】最初に、特典映像の関係者インタビュー(字幕)を見よう

DVDを購入したら、まず「特典映像」を見る。これは約25分の関係者インタビューだ。

最初に、D・C・フォンタナ(脚本/共同製作)とルー・シャイマー(製作者、フィルメーション社)によって、TASの背景や概要が語られる。

フォンタナは、TASの最重要人物で最大の功労者だろう。彼女なくしてTASは生まれなかった。

ルー・シャイマーは、フィルメーション社の創立者=社長である。(DVDでは詳しく語られていないが)フィルメーション社は、アメリカのテレビアニメ界を代表するアニメ製作会社で、ハンナ・バーバラと並んで良質の番組を数多く製作した。
TASの他には、バットマン・シリーズがフィルメーション社を代表するヒット作品だ。

TASは、フィルメーション社の“リミテッド・アニメーション”と呼ばれる手法で製作された。TASの製作は同社の技術力と(子供向けアニメにとどまらないという)製作範囲の広さを世に知らしめた。ルー・シャイマーはTASでエミー賞を受賞している。


特典映像では、さらに、ハル・サザーランド(TAS監督)、デビッド・ジェロルド(脚本)、ラリー・ブロディ(脚本)の主要な製作陣が当時を回想する。

ハル・サザーランドはTASのほとんどのエピソードを監督。デビッド・ジェロルドは2つのエピソードの脚本を書いている。

この特典映像のインタビューで、まずTASの概要を頭に入れておこう。


【2】デビッド・ジェロルド脚本の2本を鑑賞しよう

次に、「謎の新兵器パラライズ光線(More Tribbles, More Troubles)」「分解宇宙人ベム(Bem)」の2本を鑑賞する。

できれば字幕で見るのが望ましい。吹き替え版は、トリブルを“ピンキー”と呼ぶなど、難解な部分があるからだ。吹き替え版はTASに慣れてから見るのがよいと思う。


視聴すると、セリフの多さに気づくはずだ。早口で、たたみかけるようなやり取りも多い。
ジェロルドによると、スクリプトは40ページにも及ぶという。1時間番組のTOSでも50~60ページである。30分番組のTASがいかに濃密な内容であるかがよくわかる。

セリフが多いということは、アクションや情景のシーンが少ないことを意味する。普通の子供向けアニメでは考えられないことだ。(※ 当時の子供向けアニメでは、“追っかけっこ”などのアクション・シーンを必ず入れるのが通例だった。)


【3】デビッド・ジェロルドのオーディオ・コメンタリーを聞こう

「謎の新兵器パラライズ光線(More Tribbles, More Troubles)」「分解宇宙人ベム(Bem)」には、ジェロルド自身のオーディオ・コメンタリーが収録されている。

本編を鑑賞したら、すぐにオーディオ・コメンタリー(字幕)を聞こう。

ユーモラスな語り口に、歯に衣を着せぬシャープな批評。いかにもデビッド・ジェロルドらしい内容で、たっぷり楽しめる。これまでに(公式には)明かされなかった情報も出てくるので興味深い。


【4】「宇宙の神ククルカン(How Sharper Than a Serpent's Tooth)」の本編とオーディオ・コメンタリーを鑑賞しよう

「宇宙の神ククルカン(How Sharper Than a Serpent's Tooth)」にも、脚本家(デビッド・ワイズ)のオーディオ・コメンタリーが収録されているので、本編&コメンタリーを視聴しよう。

デビッド・ワイズは、このエピソードの製作過程をこまかく述べている。
私は、脚本家が音声収録に立ち会って、発音を指導するくだりが興味深かった。

スタートレックは、特殊な固有名詞や造語が多いので、発音に苦労する。中には、それを書いた作者にしか読めないような単語も出てくる。そういう意味では、脚本家が収録に立ち会うのがベストだ。(発音を統一するためにも、“別どり”ではなく、全員が集まって朗読するのが望ましい。)


【5】テキスト・コメンタリーを含む3本を鑑賞しよう

DVD鑑賞も、いよいよ佳境である。

「タイムトラベルの驚異(Yesteryear)」、「人間動物園(The Eye of the Beholder)」、「逆流する時間(The Counter-Clock Incident)」の3本にはテキスト・コメンタリーが収録されているので、まず本編を鑑賞しよう。

本編を見たら、すぐにテキスト・コメンタリー(字幕)を読もう。これは非常に濃い内容で、資料価値が高い。(テキストは無記名で書かれているが、文体や内容から、マイケル・オクダ氏の記述と思われる。)


TASをご覧になれば、このアニメが“独特の絵作り”をしていることに気づく。
これは“リミテッド・アニメーション”と呼ばれる、アニメ製作にかかるコストと時間を節約する、特殊な技法だ。
マイケル・オクダは、さすがに美術部門の専門家らしく、“リミテッド・アニメーション”の説明に力を入れている。これは、アマチュアのアニメ作家にも参考になるだろう。(“リミテッド・アニメーション”の内容についてはテキスト・コメンタリーをお読みいただきたい。)

プロの仕事では、時間・人・経費を節約することが常に求められる。プロとアマチュアの最も大きな違いは、そこにある。限られた日時・予算内で最高の作品を作るためには、可能な限りの節約をしなければならない。そうしてこそ、必要な部分に、予算を投入できるのである。


オクダのコメンタリーでは、随所で関係者の証言を引用している。「2006年に こう語った」という記述もあるので、このDVDのために関係者にインタビューしたのだろう。氏の労力のおかげで、このテキスト・コメンタリーは文句なしに第一級の資料となっている。


【6】名作エピソードを鑑賞しよう

以上が、私のおすすめDVD鑑賞コースだ。あとは自由に、残りのエピソードを楽しんでいただきたい。

おまけとして、(上記のエピソード以外の)私の好きなエピソードを挙げさせていただくと、


「変身!ベンドリア人の怪(The Survivor)」
素晴らしい脚本!
わずか20分ほどの本編時間に、ミステリー、謎解き、アクション、情感あふれる恋、が濃縮されている。劇作家の教科書にしたいような見事な作品だ。
アンと“カーター”は、これからどんな話をするのだろう・・・。
可変種のドラマは、「人間とは何か」を、我々に問いかけているような気がする。


「宇宙のイタズラ(The Practical Joker)」
アニメならではの面白いエピソード。
このエピソードは、“ホロデッキの初登場”という意味で有名だが、それ以外にも奇想天外なアイデアで我々を楽しませてくれる。
娯楽室(ホロデッキ)の騒動、フード・シンセサイザーの暴走、エネルギー・フィールドの爆発、20倍の風船エンタープライズ!
あぁ、実写版で見たい!


というわけで、見れば見るほど楽しめる「まんが宇宙大作戦」だ。


(完)


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 (Posted 2006/10/04 21:01)

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